読書:『ベトナム語はじめの一歩まえ』

何となく駿河屋でベトナムとかベトナム語とかで検索して安い本を見つけては買うということをしているので、この本もそんな感じで何となく買ってしまった本の一つ。
ベトナム語はじめの一歩まえ(写真では「まえ」がシールで切れている)

読み始めて直ぐに思ったのは2001年時点でのベトナムの状況を説明しており、2020年の現在の状況とはだいぶ違うので、著者が2001年時点で思ったことが今現在のベトナムに当てはまらない事も多く、読んでいて微妙だなというのが正直な感想であった。
それで気が乗らない感じで週に一回30分程度読み進めていた。
著者冨田健次という人はベトナム戦争終結直前の南ベトナムを訪問しており、終結直後のハノイにも訪問していて、その後もベトナムに深く関わってきた人なのだそうで、ベトナムに対する思いの強さはひしひしと伝わってくる。
また、ベトナムに大きく関わっているがゆえに知り得たであろう雑学的情報がたくさんあり、それも興味深い。
第一章、第二章はベトナムの文化とベトナム料理について語り続けており、ベトナム語やベトナムに10年以上関わっている私にとっては興味深い内容が色々と記載されているのであるが、自分が思ったことを自分のために記しただけのような文章であり、わかりやすい文章を書くことは出来ていない。
少し前に『ベトナム風という間違った表現』という記事を書いたが、「ベトナム風」という表現がこの本に多数登場すると記した。
どのような表現かというと

P92 bánh mì  thịt ベトナム風サンドイッチ
P93 phở ベトナム風うどん
P94 nhúng dấm ベトナム風しゃぶしゃぶ
p95 bánh cuốn  ベトナム風蒸し餃子
P111 chè  ベトナム風ぜんざい
P119 hủ tiếu ベトナム風細うどん
P119 hủ tiếu khô 汁なし細うどん

ベトナム風だらけで、よくこんな間違った表現を多用できるなぁと感じる。
ただ一点不思議なのはBánh xèoについては「ベトナム風お好み焼き」と記していないのである。(そもそもBánh xèoが登場していないだけなのだが)
「ベトナム風」で日本で一番見かける表現がバインセオ・ベトナム風お好み焼きという記述なのだけど、少なくともこれに関してはこの本が出どころではなさそう。
この本に記載されている他のベトナム風何々は現代において特に他の本で使われることは殆どなく普及しなかった言葉となっているからベトナム風という間違った表現が広まったのはこの本とは関係ないのかもしれない

さて、第三章は『ベトナム語入門』となっており、ベトナム語がどんな言語であるかを説明している。
だが、発音の難しさやバリエーションの多さをひたすら文章で説明しており、どう考えてもこれは『ベトナム語入門』として役に立つ内容ではない。
私はずっとベトナム語を勉強してきたから書いてある内容を実体験をもとに何が言いたいかを理解できるが、ベトナム語を勉強したことが無い人が読んだら何を言いたいのかわかるとは思えない。
色々と私にとっては興味深い内容が記されているので読んで良かったとは思っているのだけど、著者は物事をわかりやすく伝えるという事が出来ない人のようでひたすらに自分が思ったことを自分の言葉で書き記している。
第三章の後半はほとんど「成語」についての記述となっている。
ベトナム語には成語がたくさんあり、「ベトナム語習得には成語が欠かせない」とまで記されている。
まぁ日本語でも会話の中で諺を含めることがあるし、ベトナム語では成語をたくさん知っていたほうが良いのかもしれない。
しかし、この第三章の後半を読み終わった直後は興味深いより、ベトナム語の深い闇を見てしまったような感じがして私は精神的に落ち込んだ。
ただ、第三章は一番最後の節に「日本語教育をはばむ現地の日本企業の姿勢」というのがある。

ここで書いてあるのは日本人観光客の増加から日本語ブームが起きて日本語を学習するベトナム人が増えたが、しっかりと身についた人は少なく、それには日本企業の姿勢も影響しているという内容。
辛抱強く日本語を教える事をせず、安易に英語で話しかけることでベトナム人もそれなら英語でいいかという感じで日本語を学習しなくなるという悪循環が述べられている。
この節の最後は以下の文章で終わる。
「現地の人の頭越しに、第三国語=英語を安易に飛び交わせることだけは、なんとか避けてほしい……せつに、そう思います。そうでないと、日本語もベトナム語も育ちません」
この本を読んでいて、ここが一番共感した。
安易に英語を使うのは本当に良くない。
旅行で立ち寄っただけであれば観光地やホテルは英語でなんとかなるだろうけど、現地の人とちゃんとコミュニケーションをとっていくなら英語では無理であり、しっかりとベトナム語を学習したり、日本語を学習して貰う必要がある。
ただ、この本に書かれている内容は2001年、19年前の状況である。
今、ベトナム人の日本語教育レベルは非常に高くなっており、N2取得者はとても多く、仕事で関わる多くのベトナム人が流暢な日本語を話している。
また、私が週に何度も受けているベトナム語オンラインレッスン(VVレッスン)の先生たちは大学生だが日本語力はなかなかのものである。
現在のベトナムでは日本語教育はとても盛んであり、ここに記されている事は杞憂であった。
今のこの状況に著者も一定の貢献をしているのかもしれない。
著者の主な著作を見ると見慣れた書名があった「ベトナム語基本単語2000」これは私がベトナム語学習の為に手にした二冊目の本であった。
それは確か14年前の2006年、その当時の私は独学でこの本の単語をパソコンで入力しまくっていた。
その結果ベトナム語をブラインドタッチで入力できるようになったのだが、単語を丸暗記するという学習法はもっとも最悪な学習法であり、私のベトナム語力は全く向上しなかった。
なので、この本の印象もまた酷く悪いものであったが、ある程度ベトナム語がわかってきた今であれば活用できるかもしれない。

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