ChromebookのLinux環境が正式になった件

 ChromebookというかChrome OSでは数年前からLinuxを動かす環境が実装されていたがベータ版という扱いであった。

 最近になってベータ版という表記が消えたので正式にChromeOSの機能となったようだ。

ChromeOSとは

 昨年あたりから日本でも主に教育市場においてChromeOSを搭載したノートパソコンChromebookが売れまくっており競合であるiPadとWindowsを大きく上回るシェアを獲得したので、そっちの方面ではかなり知られるようになった。

 その影響で自分用に購入する人も増えてきているように思える。

 さて、そのChromeOSの基本コンセプトはChromeブラウザのみのOSであった。

 であったというのは、その後に機能が追加されてAndroidアプリが動くようになったり、今回の主題であるLinuxアプリが動くようになったからブラウザのみではなくなった。

 しかし、基本コンセプトはChromeブラウザのみでGoogle Workspaceのようにブラウザで動くWebアプリで全てを処理するというものである。

 このコンセプトは処理のほとんどをサーバー側が行うので端末に高性能なCPUやメモリ、ストレージを必要としない。

 この為、ChromeOS搭載端末は非力なCPUかつ16GByte程度の少しのストレージしか搭載していなくても問題なく使用できた。

 アプリをインストールすることがない為、アプリのアップデートに時間がかかることもなく、起動も軽快で快適に使用することが出来た。

 また、ほとんどのデータがクラウド上にあり、Googleの最高のセキュリティによって守られている事も重要で、うっかり端末を紛失しても端末上には何もデータがないので極めて安全であった。

 ChromeOSのこのコンセプトは安全かつ高速、使いたい時にいつでも素早く使えるというメリットを持っていた。また非力なハードでもなんの問題もないので安価に購入できるというメリットもあった。端末価格は3万円程度でキビキビと動くマシンが手に入るのである。

 主に教育市場で普及が始まったChromeOSはハードウェアの管理の容易さも普及した要因の一つであろう。

 複数のアプリの管理を必要としないコンセプトは技術者不要で管理を行うことが出来る。

 セットアップにかかる工数も0に近い。

 私はもう何年も前から仕事で利用しているが、Google Workspace(旧Google Apps→G Suite)との親和性は抜群であり、仕事でも十分活用できる。起動が早くメンテナンスがほぼ不要なのでWindowsより遥かに仕事に向いていると感じる。

 だが、従来のアプリをインストールして使うことに慣れた人たちはなかなか変化に対応できないようで、MS系アプリを使いたがる為にChromeOSに移行できない人もいる。

 また、Adobe系を使いたいと思う人も移行できない。

 そう、MacやWindowsで愛用しているソフトがある人ほど移行を難しいと感じるのである。

 このようにChromeOSはある意味突き抜けたコンセプトのOSであり、世の中にコンピューターとは何か? を問い詰めているようであった。

 実際、私は会社でペーパーレスと同時にローカルにファイルを作らないファイルレスを提唱し、無駄の削除とセキュリティの向上を同時に成し遂げようとした。

 しかし、まだ道半ばだとも言える。

Androidで変化したChromeOS

 先に記したようにWebアプリに特化したChromeOSはコンセプトが明確であり、そのコンセプトを理解して適応出来る人にとっては最高の端末であった。

 一方、従来からあるファイルという概念にとらわれる人にとっては何の意味があるのか理解できない端末でもあった。

 そして、多分、そうしたWebアプリだけでは対応が難しいような場面に対応するため、モバイル市場では世界的に圧倒的な存在感のあるAndroidアプリを稼働できるようにしたのだろうと思う。

 Androidアプリはそれこそ大量に存在するので、ゲームだけではなく、様々なビジネス系アプリやユーティリティーが使えるようになった。

 しかし、Androidアプリをどんどんインストールするには16Gや32Gの端末ではストレージ不足になる。

 このため、ChromeOSのストレージ大容量化と高額な高級機の増加が始まった。

 とは言ってもAndroidアプリなのでMacやWindowsほどのストレージを必要とするわけではない。

 Androidアプリが動作するようになった事はChromeOSユーザーに様々な選択肢を与えることになった。

 同じ作業をするにしてもWebアプリとAndroidアプリの選択肢がある。

 例えばGoogleスプレッドシートでもWebアプリとしてブラウザから操作するか、Androidアプリを起動して操作するかでは作業効率に違いが出てくる。

 挙動としてはAndroidアプリの方がキビキビと動作するが、PC向けのショートカットが使えず、タッチ操作を前提とした操作感である為、私はAndroidアプリをほとんど使わない。

 まぁこれは数年前の感想なので最近のAndroidアプリは違うのかもしれない。

 ただ、Androidが主にスマートフォンで普及したOSであり、多くのアプリが狭い画面で使用することを想定した画面設計になっていることは間違いない事実である。

 大きな画面でのテストをちゃんとしてあり、なおかつキーボードがある場合はショートカットも使えるというアプリは多数派ではない。

 Androidアプリが動くようになったことに大きなメリットを感じる人もいたと思われるが、私が仕事で使う限りはWebアプリの方が良いと感じることが多かった。

Linuxで更に変わったChromeOS

Androidが動くようになって少ししてLinuxも動くようになった。

初めは一部の機種で試験的に動くようになったが、対応機種は増え続け、現在では発売される端末の全てがLinuxアプリを稼働できるようだ。

そして最近、Linux環境からベータの文字が消えてChromeOSの正式な環境となった。

こうなると普段デスクトップ公私共にUbuntu Linuxを愛用している私はChromeOSでもLinuxを使い込んでみようかという気分になった。(しかし、まだ使い込んだとは言えない)

まず、ChromeOSにおけるLinux環境とは何か?

そもそも、このChrombookを利用している人でこの機能を利用している人はどれくらいいるのだろう? 

多分、普段Linuxを使っていない人にとっては良くわからない黒いウィンドウが起動して、コマンドを入力しなければならず、Linuxコマンドを知らないと何も出来ないと思って一回起動して閉じてしまうような人が多いのではないかと感じる。

そう、昨今のUbuntu Linuxのようにグラフィカルな環境が始めから用意されているわけではない。Linuxコマンドが入力できる状態のみで提供されている。

しかし、この真っ黒な端末画面を見て逃げるように閉じているとしたら、それはとてももったいない事である。

ChromeOSへのLinuxアプリインストール方法はWeb上に多く掲載されており、それをコピーして端末に貼り付ければ好きなLinuxアプリをインストールすることが出来る。

フォトレタッチソフトのGIMPや3Dアニメーション作成ソフトのBlenderなど、様々なLinuxアプリをインストールして稼働させることが出来る。

また、Gnomeソフトウェアセンターをインストールしてしまえば、その後はソフトウェアセンターから選ぶだけでLinuxアプリをインストールできるようになるので、Gnomeソフトウェアセンターのみコピーペーストでコマンドからインストールして、後はGUIでソフトをインストールしても良い。



Linuxが動くということは、Linux上でさらに仮想マシンを動かしたり、Andoroidスタジオをインストールして開発環境を構築したりと、ある意味なんでも出来てしまう。

だが、しかし・・・・・・。

なんでも出来てしまうという事はストレージはいくらあっても足りないという事を意味しているし、CPUも速けれ速いほどよいということを意味している。

これはもうChromebook、ChromeOSのコンセプトから大きく逸脱している。

ただ、Linux環境は設定からデベロッパーを選ばねば出てこないので、あくまで開発環境という意味合いであり、Blenderでばりばりアニメーション作ってくださいという方向性ではないのかもしれない。

Linux環境としての比較

他のLinux環境と言っても、Linuxがインストールされた状態で販売されているノートパソコンは少数派であり、DELL等、一部のメーカーではインストール済みOSのオプションにUbuntuLinuxがあるものの、日本のメーカーはほぼWindowsがインストールされたパソコンしか販売していない。特にノートパソコンでは少ない。

なので、私のようにLinuxを使いたい人は後からインストールする必要がある。

これが結構面倒で、ハードウェアとの相性問題が発生することもある。そして、当然動作は自己責任でありメーカーサポートは得られない。多分ハードウェアトラブルがあったときも修理してもらえなくなる可能性がある。

ChromeOSがLinuxに正式に対応したの事の重要なポイントがここにあると思う。

メーカーサポートを受けられる状態でLinuxが正式に動くのである。

ハードウェアの相性などを気にしながらインストールする必要もない。始めから使えるようになっている。

ChromeOSのLinux正式化はLinuxを安心して使える環境が簡単に手に入るようになったという意味で意義があると言えるであろう。

MacやWindowsの上に仮想環境としてLinuxをインストールする事も出来るが、仮想環境なのでメインのOSとして使う感じではなくなる。

ChromeOSでLinuxが正式に動くようになったことはLinuxノートパソコンを求めている人にとっては有効な選択肢と言える。

気になる点

だが、ちょっと使ってみて気になる点があった。

仕事用のChromebookで仕事アカウントでLinuxを有効化した後、今度は個人用GoogleアカウントでログインしてLinuxを有効にしようとするとインストールできなかった。


インストールするのは450MBのデータがダウンロードされると表示される


そして暫くするとLinuxをインストールするには3.0GBの空き容量が必要ですと表示されてインストールに失敗した。

これでわかったのはChromeOSにおいて、Linux環境はアカウント毎に別個で作成されるという事。

そこにアプリをインストールすれば同じアプリを別々のユーザーがインストールするとそれぞれにディスク容量を消費することになる。

通常のLinux環境ではOSは一つであり、そこにユーザーごとの設定が作られるのみである。

なので誰かがGIMPをインストールすれば、別のユーザーもGIMPを使用することが出来る。

ChromeOSのLinux環境は完全に別個に作られるため、5人のユーザーアカウントでそれぞれLinuxをインストールしてGIMPをインストールした場合、5倍の容量を消費することになる。

この仕様は自分しか使わないようなChromebookであれば何の問題もないが、会社や家庭で複数人が共用するChromebookではLinuxを有効化するとかなり危険だという事になる。

もともとストレージ容量の少ない機種が多いChromebookで複数人がLinuxを有効化したらあっという間にストレージが無くなってしまう。

ChromeOSの基本コンセプトは何もインストールしないOSであり、複数人が共用しやすい仕組みとなっている。30人に対して10台用意しておいて空いているChromebookを自由に使うという事が可能であり、実際便利なのである。設定はGoogleアカウントで管理されているのでどのChromebookを利用しようと自分の環境が素早く使えるようになっている。

だが、このコンセプトからLinux環境は完全に外れている。

Linux環境はアプリをインストールすればするほどストレージを消費し、利用する人数が多けれ多いほどさらに消費する。

Linux環境は必要としている人には便利だが、個人専用のChromebookで使うのが良いだろう。


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