『Smile Reversi』−勝利よし、敗北なおよし− 制作ノート

 




『Smile Rversi』(スマイル☆リバーシ)−勝利よし、敗北なおよし− を公開してから一ヶ月ほど経過したので制作ノートを記す。



『Smile Rversi』はCPU対戦リバーシであり、初期段階ではプログラミングの練習目的で作ったCPUが弱くてなんの面白みもないゲームであった。

なんの工夫もないのもどうかと思い、最初に行った付加要素は『不揃い処理』であった。




よく見て貰うとわかるようにマスに対して石が中央に配置されず全てが微妙にズレている。
この手のゲームではマスに対して中央に石が配置されるゲームが多いが、人間は正確に中央には配置できないので不自然に見える。
なので、自然に見えるように工夫したのがこの『不揃い処理』である。
 ただ、この処理を作った時に思ったのは、自分としてはとても気に入っているけど、ほとんどの人は気づきもしないという事。

 プログラミングの練習目的で作っているのだから公開しなければならないわけではないし、弱いだけのリバーシなんて公開しても誰も遊ばないことは明白で、この不揃い処理を加えたところで遊びたいと思わせる要素には全くならない。

 でも、せっかく作ったのだからなんかの要素を付加して公開できないかな? と思った。

 色んな可能性を考えている中で、前回の『早押し百人一首 十連‼』で音声を付与した途端、作品に色がついたような感覚を思い返していた。
 CPU対戦だからキャラクターに個性を持たせて、複数人用意してそれぞれにセリフを用意したらどうだろうかと連想が始まる。
 でもCPUは弱いし、リバーシにそれほど興味のない私がこれ以上強いのを作る気力はない。
 複数人CPU用意したって強くもなんとも無いリバーシを遊びたいと思う人がいるだろうか?

 まてよ、逆に物凄く弱くして、敗けるのが難しいようにしたらどうだろう? そう思って弱いCPUを作ってみた。
 うーん、弱いCPUといっても敗けること自体は出来る。
 これでいいのかなぁとまた悩んだ。
 そして、たどり着いたのが戦況を9段階に分けて状況に応じたセリフを用意する。勝利を目指すのではなく、状況に応じて変化するCPUキャラの表情の変化、セリフの変化を楽しむというコンセプト。

 これは勝利という目的を転換して、目的を楽しむに変えるという事になる。
 よく考えてみると友達とリバーシをするというのは先に友達と遊ぶ、楽しい時間を過ごすという目的があり、その中の手段としてリバーシが選ばれているに過ぎないのだから、目的の転換というより本来の趣旨に戻っているとも言える。

 ここまでまとまってきたところで私は前回お世話になった声優JiRさまに相談した。
 セリフに音声を付ける事、ゲームの趣旨、それから私が少女キャラのセリフを考えると不自然なセリフになりそうだから助けてもらえないかというお願い。
 JiRさまは協力してくれるという事でこの方針で進めることが確定した。

 かくして、音声の依頼をする前にセリフを用意してプログラムに組み込んでいく最初の段階からJiRさまに相談しつつ少女から実装を始めた。


キャラクター画像

 CPUの思考ルーチンは当初から3段階と決まっていて、CPUキャラも少女、兄、ママと決まっていた。もっとも最初のキャラデザインがそのまま使われているのは少女のみで兄とママは実際に実装する段階でキャラクターのベースデザインを大きく変更している。

 前回の『早押し百人一首 十連‼』でも生成AIによるキャラクター画像を使用しているが、キャラクターの固定化は出来ていなかった。『Smile Rversi』ではキャラクターを固定して様々な表情を生成するという趣旨で行っている。
 これはMid Journey、nijijourneyの機能としてキャラクターリファレンスという機能が実装されたことで実現した。
 生成AIの進化はこの1年でも大きく進んでいる。
 だが、このキャラクターリファレンスを用いても実際にはうまく生成されない事の方が多い。
 同時に4つ生成されるので、その中で一つくらいは使える画像があるという程度で、4つとも使い物にならないという事もよくあった。
例えば、これはママにピースサインをさせるという指示で生成された画像である。これはどれも服の袖が長すぎて手が半分ほど隠れており却下とした。ピースサイン画像は何度か試して結局全てだめで作中には存在していない。

 うまく生成出来ない問題としては服のデザインが異なるが一番多かった。
 兄、ママが少女よりシンプルな服装をしているのは少女の各種画像生成にとても苦労したから。
 大量に生成しては、これはだめ、これもだめと編集者のように選別を続ける作業は結構疲れるもので、生成AIが疲れずに何度でも画像を生成してくれても、それを選別する方のこちらが疲れてしまう。


ミドリのチェック柄を着ているはずがピンクだったり、こういう使えない画像が大量生産されていた。

背景白を指定しているのに白じゃないのもたくさん。
こういうのを選別して残った画像がゲーム内の画像。
必要な表情が足りなくて妥協したものも結構ある。同じ作業をずっと繰り返しているとだんだん気力が持たなくなっていく。

セリフについて

 セリフは、特に作品コンセプトそのものの少女の場合、私がセリフを考えても不自然なセリフしか思い浮かばないだろうなぁと思ってJiRさまに確認をしてもらっていたのだけど、意外な事にほぼOKがでて駄目出しされなかった。
 けど、相談ができることはとても安心感があって助かった。必要以上に日報的に進捗報告をしてしまったけど、いままでの作品と異なり自分一人の世界で自分と向き合い続けるのとは違った。
 セリフを考えるのも画像を作るのと同様結構な作業で、こちらは生成AIではなくひたすら自分で考えて作っていたのだけど、画像とは違う疲れ方だった。
 9段階の状況に合わせてランダムで3つのセリフ、リアクション用セリフ、そして決着時のメッセージを考えなければならず、さらにそれが3人分なので結構な手間だった。
 もちろん文章を考えるのは好きなので楽しい部分もあるのだけど、早めにセリフを確定してJiRさまに依頼を出す必要もあったし、時間に追われながらの作業だったのも大変だった。

 なお、少女はセリフを先に作って画像は後からだったのだけど、兄、ママは画像を先に作り、選別した画像の表情を見ながら表情を参考にしてセリフを作ったので考えるのは少し楽だった。
 作業中は多いと思ったセリフも実際にJiRさまの収録が終わってテストプレイで聞いてみると同じセリフが結構な頻度で出てくるのでもっと多いほうが良かったなと思った。

 でも、これはプログラミングの学習目的で作ったものであり、ここでさらにセリフを追加して再度JiRさまに収録依頼を行うほどの手間を掛ける気はなかった。なのでセリフの追加はしなかった。何かの機会にCPUキャラのセリフを考える時が来たら、この経験が活きるだろう。(対戦中とは別のちょっとしたセリフについては後から追加している部分がある。)

制作裏話 (対談)

阮文
「制作ノートの前半で私視点の経緯は記されているので、JiRさま視点で私の依頼相談が来た時の事を教えてほしいです」

JiRさま
「阮文さまからリバーシのゲームに音声をつけたいとお話を聞いたとき、直感的に「おもしろそう!」と思いました。
難易度に合わせたキャラクターたちの画像を見せていただいたときも、まず見た目が魅力的だなと感じました。翠ちゃんはかわいいし、黎鵺くんはおしゃれでかっこいい。そしてお母さんはハツラツとした美人ママ!
AIでこんなにも生き生きとしたキャラクターを生成できるなんてすごいですよね。
私はAIでキャラクター生成をしたことがないので想像がつかないのですが、具体的にはどのような指示をしていたのでしょうか?」

阮文
「前回無茶な依頼をした人がまた無茶な依頼をー ってならなかったですか😅
キャラに魅力を感じてもらえたのは良かったです。
画像生成はこのような指示です。
「少女、9歳、上半身、口を閉じている、前を向いている、薄いピンク背景、緑のチェック柄を着ている」
これにキャラクターリファレンス用の画像を参照させています」

JiRさま
「百人一首のときは競技かるたの読み方ができるだろうか、今回は3人の演じ分けができるだろうか…!という不安はありましたが、無茶な依頼だなんてことは全然思いませんでした。
またこうして依頼していただけるとは思っていなかったのでとても嬉しかったです!
なるほど!そのような指示でキャラクターたちが誕生したのですね。
翠ちゃんはシャインマスカットが好き、など好物についてのセリフもありましたが、キャラクターの設定を考える際にはどのようにイメージしていったのですか?」

阮文
「面倒な客と思われてなくて良かったです😌
設定はもともと何もなくて後付なのです。なんとなく、少女らしいキャラクター画像が生成された→たまたま緑のチェック柄を着ていた→名前はみどりと読める漢字を調査、翠(みどり)に決定→セリフを考えている時に、なんとなく好物がわかるとキャラクターに親しみが湧くかも→緑色の食べ物といえばシャインマスカットかなぁ
こんな感じで兄(黎鵺れいや)の場合もなんとなく黒の服になって、黒の意味を持つ黎と「や」の発音の漢字で黒を感じさせる鵺を選び、黒い食べ物としてチェコ好きにしました。
ママ(蜜華)の段階になると始めから同じパターンでささっと作ろうという意識になり、テーマカラーはオレンジ、好きなものもオレンジ、元気できれいなママって設定にしました。
ただ、ママは子供じゃないので子供っぽくないセリフを考えているうちに不思議なセリフも混入していますけど」

JiRさま
「全然そんなこと思わないですよ🙆✨

そうだったのですね👀!!! 連想ゲームのようですね。
不思議なセリフが入ることによってさらに個性的になっているのでよかったのではないかなと思います!」

阮文
「不思議なセリフを収録する時に「このセリフ何?」ってならなかったですか?」

JiRさま
「個性的でおもしろいなと思いました!

このママが買い物するときはオレンジやシャインマスカットがカゴの中に入っているんだろうなーとか黎鵺くんはショコラショーを自分でつくったりするのかななんて日常生活についても想像できたりするので特徴的な方が楽しいですね!」

阮文
「そんな方向に想像が広がっていたのですね! ショコラショー、わたし自身は作ったことありますよ😀
さて、それではそれぞれのキャラを収録していて苦労したこととか、印象に残った事ありますか? まずは翠ちゃんから」

JiRさま
「そうなんです😆
阮文さまはつくったことがあるのですね👀✨
翠ちゃんはとにかくかわいらしい子なので、可愛い声にできるのかという不安がありました💦少女役というのはあまり経験がなくて、子供っぽくなりすぎず、お姉さんになりすぎないようにしようと気をつけていました。」

阮文
「翠ちゃんの好きなセリフはありますか?」

JiRさま「わたしはおにいちゃんよりつよいよーです。
うんうん、そうなんだね、かわいいなぁって思いました☺」

阮文
「JiRさまの声が頭に浮かびます!

では、兄(黎鵺)で苦労した事、印象に残ったセリフはありますか?」

JiRさま
「ありがとうございます🙌✨

黎鵺くんは苦労したことはなかったです。かっこよく、時にかわいらしく思ってもらえるようにしようと意識していました。
印象に残ったのは、ドキドキ、なんだろう、胸が高鳴っている。チョコの食べ過ぎ?というセリフですね!
普段かっこいい感じなのにこんな不思議ちゃんなことも言うんだ!というのがなんともかわいらしいですよね。」

阮文
「あ、そのセリフはわたしも作った時にちょっと印象に残っていますね。人によってどう感じるか違うかもと思いながら作りました。楽しんでもらえてよかったです。
最後はママ(蜜華)の収録で苦労した事、印象に残ったセリフはどうでしょう?」

JiRさま
「ママも特に苦労したところはなかったです。印象に残っているセリフはたくさんありますね!
私、黄昏が好きなのよ。オレンジだからかしら?というセリフは親子だなぁという感じがして好きです。ママのセリフはThe大人という印象で、いろんな意味でドキッとさせられるものが多いかなと思いました。おりこうさんねとかあなたの笑顔はちょっと不愉快よねとか。」

阮文
「ママのセリフは一番最後に作っていたので要領がわかってきてちょっと調子に乗って作っちゃった部分もあるかもです。
リアクションは優しいママという雰囲気になるように作りました 「お利口さんね」「考えたわね」はそういう感じですね。滅多に出ない引き分け時の「私の目を曇らせたのはあなた、あなたを見極めたいわ」はちょっとやりすぎかなとか思いつつそのままにしました。まぁ引き分けの3種類はほとんどの人は聞く機会が無いでしょうけど」

JiRさま
「引き分けはレアですね!私自身、ママの引き分けボイスは聞けていないです。」

阮文
「ママ以外の引き分けメッセージは聞きましたか?
3人共3種類引き分け時のメッセージを作って収録してもらいましたが、聞いてもらえないのがちょっと勿体ない気はしますね」

JiRさま
「聞きました!私はリバーシが得意じゃないので偶然でしたが聞けて嬉しかったです。
本当にいろんなパターンがあるのでぜひ聞いていただきたいです!」

阮文
「レアなので聞けて良かったですね
わたしが特に聞いてもらいたいなーと思うのは白圧勝時の翠ちゃん「しょうりのひけつをおしえてあげるね! 両手を上にあげながらいきをするでしょー! それでさげながらいきをはくー」ですね。JiRさまはどうでしょう?」

JiRさま
「あ!そのセリフはかわいくて好きなセリフなので私も聞いてほしいですね!
あとは黎鵺くんの、ごめん! こんなに圧勝するつもりじゃなかったんだ。へへ!です!自信満々な黎鵺くんのかわいらしいところが出ているので!」

阮文
「わたしが作ったセリフではありますが、わたし自身は男性キャラをかわいいとは感じないので、そういうふうに思うんだなーという感じです」

JiRさま
「黎鵺くんは特にギャップがいいなと思います!
阮文さまは3人の中で特にお気に入りのキャラクターはいますか?
私は翠ちゃんです!かわいくてかわいくて…泣かせたくないなって思います(笑)」

阮文
「そうなんですね。わたしの想定していない好かれ方が面白いです😅
わたしはママが好きかも 翠ちゃんは9歳の設定でかわいくて無邪気な感じを意識していて、兄(黎鵺)はすっごい妹思いキャラにしようと思っていたんですけど、あんまりそこ強調すると引くかもという事であんな感じになりました。ママは方向性があまり無くて、こんなセリフ言ってくれたら面白いかもっていう自分の願望が出てますかね💦」

JiRさま
「なるほど!そんな裏話が!
方向性が定まっていないからこそ、ですね。」

阮文
「はい。
ところで、声優って楽しいですか?」

JiRさま
「楽しいですよ😆
いろいろな世界で様々な人生を送ることができますから!1人では決して味わうことの出来ない達成感や充足感があります。」

阮文
「あ、そうなんですね。
わたしはセリフを考えているのは結構疲れるけど面白いとは思うんですが、わたしが作ったセリフを読んでいて面白いのかな? って思っていました。
セリフを作る側とそれを演じる側ってある意味真逆かもですね。」

JiRさま
「私はセリフやお話を考えるのは苦手なので…お話を読んだり、セリフを読んだりするのはおもしろいなと感じます。
確かに、真逆な部分があるかもしれませんね!」

阮文
「ただ、わたしが記したセリフはただの文字で、どんな感じで喋るかの指定もありませんでした
実際にJiRさまが演じた音声を聴くと、セリフに命が吹き込まれたようにいきいきとしているの感じました✨
ただの文字に喋り方、抑揚、音程さまざまな情報を付与するのは創作的とも言えますね
今回の『Smile Rversi』はなんてことないリバーシに付加価値を付与して、むしろ付加価値をメインに持ってきたものなので、その中核を演じられたJiRさまにとても感謝しています
ありがとうございました✨」

JiRさま
「そのように感じていただけてとても嬉しいです!
ご依頼だけでは知ることができなかったことやわからなかったことなど、たくさんのことをこの制作を通して教えていただきました。こちらこそ、ありがとうございました☺✨」

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