よく見かける「ベトナム風」という間違った表現
日本にあるベトナム料理の店に行くとよく見かけるのはベトナム風「お好み焼き」といった説明である。 Bánh xèo Bánh xèo(バンセオ・バインセオ)の事をこのように表記しているのだけど、Bánh xèoは日本のお好み焼きとはだいぶ違う料理でお好み焼きという感じはしない。 それよりもっと引っかかるのはベトナム風という言葉である。 何々風という言葉はそれっぽく見えるが確証は無いときに使う言葉であろう。または明らかにそれっぽく真似たものに使われる。 中華風スープとなれば中華料理に使う調味料を使ってみたとか、何かしら中華料理に似せたものに使われる だから何々風というのはそれっぽく見えたり、それっぽく見せたりする表現である。 OL風の人が店に入ってきた。という表現はOLかどうかわからないがそれっぽく見える事を表しており、中華風スープはそれっぽく見えたり感じたりするように作ったものであって中華料理そのものではない。 であるのに、Bánh xèoの事をベトナム風お好み焼きなんて表記するのは滅茶苦茶な話である。 これではBánh xèoはお好み焼きをちょっとベトナム風にアレンジしたもので、ベトナムの料理ではないと言っているようなものである。 この表記を初めて見たのはすでに10年以上前であり、その時から気になっていた。 ベトナム語を学習していると、料理の用語説明がどの学習書にも必ずあるが、Bánh xèoに関してはほぼどの本でもベトナム風お好み焼きという間違った表現が行われている。 何故このような間違った表現が広まってしまったのだろうか。 はっきりとした事は今の所わからないのだけど、最近読んでいる『ベトナム語はじめの一歩まえ/冨田 健次 (著)』という本にこのような表現が頻出していた。 この本ではPhở(フォー)の事をベトナム風「うどん」と説明している。 Phởは麺類ではあるが、米粉を使っており、きしめんのように平たく、牛肉か鶏肉が具材となる。スープも日本のうどんとは全然違う。 Phở(フォー) 麺が平べったい うどんとの共通項はほぼゼロであるのに、単に白くて蕎麦よりは太い麺類だからうどんでいいかという感じで表現してしまったとしか思えない短絡な表現である。 この表現が著者が名付ける前から既に広まっていたのか、著者が初めて表現したのかどうかわからない。 著者はベトナム戦争終結前か...